オランダの超大規模な有機農園を見学しました@Noordoostpolder【世界の有機(オーガニック)農家視察】

こんにちは、オランダよりミズキ(@yMIZUKI8)です。

オランダにて大規模な有機農園を見学してきたのでレポートします。

日本では、ほぼみられない規模の有機(オーガニック)農園だと思います。

オランダでも有機農業が今よりもマイナーだった、90年代から有機栽培をしているパイオニア的な農家さんでした。

ぼく自身、オランダではよく有機野菜を購入しています。

その理由は、オランダでは普通のスーパーでも沢山の有機野菜が販売されていて (感覚値で全体の1-2割程) 、値段も慣行栽培の野菜とあまり変わらないからです(感覚値で50セントから1ユーロ程)。

s_オーガニック野菜2.JPG

※オーガニックマーケットにて

また、虫食いもほとんどなく、見た目も慣行栽培野菜とあまり変わらない、質の高い有機野菜が多いんです!

有機野菜やオーガニック製品を専門に扱う大規模なお店も結構あります。

オーガニック野菜1

※オーガニック専門店にて

ぼくは、こういった質の高い有機野菜がどうやって栽培されているのか、いつか見学してみたいと思っていました。

本レポートでは見学した有機農園について、有機農業を始めた経緯も含めて詳しく紹介しています。

皆様のご参考になれば幸いです。

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見学した有機農園について

まずは見学させて頂いた有機農園の概要を簡単にご紹介。

見学は11月上旬に行いました。

場所はオランダの北東ポルダー(Noordoostpolder)

ぼくが見学させて頂いた農園は、オランダの干拓地の1つである東北ポルダーにありました。

北東ポルダーの位置.png
※赤で囲っているところが東北ポルダー

ポルダーとは、地理の授業でもでるオランダの「干拓地」のことです。

北東ポルダーは1950年代に建設された(設立1962年)干拓地で、オランダでも最大の土地 (約4万6千ha) を有してます【Wikipediaより】。

また、今回見学させて頂いた農園は、日本からオランダに農業研修に来られているKさんの研修先でもありました。

Kさんは約6ヶ月間この有機農園で研修されており、とても詳しく色々とご説明して頂きました。

休日にも関わらずご案内して頂いてKさんと同農園のオーナーに感謝です。 

s_農園の小屋.JPG

農地の規模は68ha

なんと、同農園の農地は合計で68ha(ヘクタール)もありました!

これは東京ドームの約14.5倍もの規模です!!

すごい規模ですね。これには本当にビックリでした。

s_農地(最初の写真).JPG
※少しわかりづらいですが、農地がずーと奥まで広がっています。ここで約30haとのこと。

以前調べたところ、2015年の日本の農家の平均経営面積は2.54ha(北海道は26.51ha)だったので、日本の農家平均の約27倍(北海道の農地平均の約2.5倍)の面積になります!
(参考:オランダ農業の「農地」について詳しく調べてみた

日本の有機農家に絞ると、さらに小規模になると思うので、同農園がどれだけ大規模に有機農業をしているかが分かります。

s_倉庫の様子.JPG

※倉庫の様子

栽培している野菜は約20種類

見学した農園は多くの種類の有機野菜を栽培していました(多品目栽培)。

カリフラワー、セロリ、根セロリ、ジャガイモ、パースニップ、ニンジンなど、約20種類の有機野菜を栽培しているそうです。

s_収穫した野菜.JPG

なお、ジャガイモは10haほど栽培していて、そのうち食用は20-30%ほどで、あとは「種芋」として種芋会社に出荷しているとのことです。

従業員の数&季節労働者・ボランティアの活用

68haもの農地を経営している同農園の従業員数は、正社員5名とパートさんが数人とのこと。

大規模な農園にしては従業員数が少ない気がしましたが、作業の大部分は機械で行っているので大丈夫なのだそうです。

でも、一番手のかかる夏場(除草作業)にはポーランド人などの季節労働者やアルバイトを活用していました。

一番多い時期で約30名程が作業しているとのことでした。

栽培スケジュール&大切にしていること

基本的には年間を通して1つの畑につき1作物を栽培しているそう(一毛作)。

そして連作障害を避けるため、栽培品目を毎年ローテーション(輪作)しています。

ここでは6年間の品目ローテーション(6年輪作)をした後に、1年間畑を休めているそうです。

ぼくが視察した時はほぼ収穫が終わっていたのですが、収穫後の畑には「緑肥」を使用して土壌を休ませていました。

s_収穫後の畑の様子.JPG

※収穫後の畑の様子

緑肥とは、

土壌を肥沃化する目的で栽培し、土にすき込む作物を緑肥作物といいます。 緑肥は土壌に休息を与え、物理的、化学的、生物的な改善が望め、地力維持と有害センチュウ防除に役立てます。 緑肥作物はさまざまな効果を持っています。 物理性として団粒構造を形成するため、透水・排水性が改善し、作物がより生育しやすい、より良い土壌にします。

【JAよこすか葉山より】

このように、同農園は年間を通じて「どれだけ畑を休ませるか」をとても大切にしているそうです!

s_堆肥の様子.JPG

畑の側で作っている堆肥(コンポスト)

s_堆肥の様子2.JPG

元肥にはこの堆肥と液体の牛糞を施肥し、追肥は基本的に行わないとのことです。

また、病害虫は基本的には発生していないそう!

オランダの寒冷な気候の影響も大きいと思いますが、同農園の栽培管理の良さや、土壌も相当健康なのではないでしょうか。

病害虫への具体的な対策や予防については詳しく聞けなかったので、次の機会があれば伺いたいと思います(すみません!)。

オランダらしさ

この大規模な有機農園でぼくが感じたオランダらしさは、作業のほとんどを「機械化」しているところです。

s_農機.JPG

やはり68haもの農地で栽培していたら、機械でいかに効率的に作業するかが大事なんですね。

収穫作業の多くも機械を使って行うようです。

しかもその収穫作業は「外注」していて、自社で収穫用の農機は保有していないとのこと。

大きな投資を行い農機を購入するよりも、外注したほうがコスト的にも効率がいいそうです。

収穫を外注できる会社があるのも、オランダならではと思いました。(ぼくは日本では聞いたことがないですが、あるんでしょうか?)

一番労力がかかる草取りも、その大部分は機械で行い、株間など機械では難しい箇所のみを手作業で行うそう。

s_選別用の機械.JPG

これは作業場にあった選別用機械。

奥に見える青い機械が収穫した野菜が入る木箱をひっくり返し、野菜がベルトコンベアに乗って手前に流れてきて、各規格ごとに自動で選別してくれます。

同農園が有機栽培を始めた経緯

次に同農園がどういう経緯で有機農業を始めたかをご紹介します。

まず、見学した北東ポルダー(干拓地)は農業や酪農が盛んのようで、現在この干拓地には約1,000戸の農家がいるそう。

その中で有機農業を行っている農家は約30戸だそうです。この地域全体の3%が有機農家ということです。

以前調べたところ、オランダ全体での有機農家の割合は約0.9%(ちなみに日本は0.5%)なので、この干拓地にはオランダ平均以上の有機農家がいることになります。
(参考:世界の有機農業(オーガニック)事情を知りたい!【有機農家(生産者)の数編】

また同農園が有機農業を始めた90年代には、同地域の有機農家数は10戸程度だったそうなので、この20年で有機農業が徐々に普及していることも伺えます。

さて本題です。

同農園は80年代に農業を始めました。もともとは慣行農業を行っていたそうです。

その後、90年代に有機農業に切り替えたそう。

一番の理由は、「付加価値」を付けて「高値」で取引を行うため。

もちろん有機農業を始めた理由には、環境・健康にもいいとの理由もあるそうですが、一番の理由は「経営的な判断」で始めたそうです。

ぼくは環境・健康にいいから、との理由を予想していたのですが、より現実的な判断だったのですね。

というのも、当時から野菜は買い叩かれていたようで、値がとても安かったそうです。

そこで当時、今以上にマイナーだった有機農業を始められたとのこと。有機農業の先駆け(パイオニア)です!

organic_farming_logo

※EUの有機認証マーク【ec.europa.euより】

さらに同農園のスゴイところは、10年前から有機農業よりもさらに基準の厳しい「バイオダイナミック農業」に切り替えたことです。

通常の有機栽培より更に厳しい基準!?バイオダイナミック農法

このバイオダイナミック農法、聞きなれない方も多いと思うので簡単にご説明します。

バイオダイナミック農法とは、人智学のルドルフ・シュタイナーによって提唱された有機農法・自然農法の一種で、循環型農業である。ドイツやスイスで普及しており、人智学運動の一角を担っている。通常の有機農業と異なり、生産物が有機的であることだけでなく、生産システムそのものが生命体(organic)であることが意識される。「理想的な農場はそれ自身で完成した個体である」というシュタイナーの思想に基づき、外部から肥料を施すことを良しとせず、理想的には農場が生態系として閉鎖系であることを目指す。

【Wikipediaより】


バイオダイナミック農法では、太陽、月、惑星と地球の位置関係が土壌や生命体の成分及び気象等に与える影響を重視して、種まき、苗植え、耕うん、調合剤の準備や施肥、収穫などの時期を天体の動きにあわせて選択します。また、土壌バランスや植物を健康に保ちつつ効果的な収穫をあげるためのサプリメント或いはコンディショナーとして、人為的な化学物質はいっさい使用しないかわりに、天然のハーブや鉱物、家畜を利用して作った各種調合剤を施します。

【ozgarden.fc2web.comより】

上記の説明のようにバイオダイナミック農業は、より自然の循環を意識した有機農法です。

(各作業を天体の動きにあわせたり、特殊な調合剤などを使用する少しミステリアスは雰囲気もありますが。)

そして販売には、ヨーロッパの有機認証(日本でいう有機JAS)よりも厳しい基準で審査される「demeter(デメター)」というバイオダイナミック農法の有機認証を取得する必要があります。

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※Demeterの認証マーク【www.demeter.netより】

このバイオダイナミック農法を始めた理由も、単なる有機農法よりも「さらに付加価値」をつけて販売だきるから、だそうです。

特に、オランダの隣国ドイツはバイオダイナミック農業の発祥の地であり、その市場が大きいので、オランダは地理的にも有利なんだそう。

同農園はこのように、時代の変化を敏感に感じながら、より経営的な目線で有機農業→バイオダイナミック農業と変遷していました。

おもな販売先は?

次に同農園の作物の主な販売先を、参考程度にご紹介します。

下記が販売先の割合のとのこと。

  • 50%:スーパーなどの小売店
  • 30%:加工会社
  • 15%:フードコーポ(生協のような組織で、顧客に宅配販売する会社)
  • 5%:直売(マーケットやネット販売など)

契約先はオランダ企業がメインですが、卸した後にバイオダイナミック市場の大きいドイツなどに輸出されているそうです。

また、同農園は同地域の他の有機農家と共同経営体(農事組合法人)を作っています。

上記販売先の約半数を占めるスーパーなどの大手小売店との契約に、共同経営体はメリットがあるそうです。

その共同経営体はBioRomeo(ビオロメオ)といいます。

BioRomeo(ビオロメオ)について

logo-bioromeo

BioRomeoは約30戸の有機農家&バイオダイナミック農家でつくられた共同経営体です。

こういった共同経営体のメリットは下記があるそうです。

  • ブランドの統一化
  • 輸送費などのコスト削減
  • 生産数(ロット)が多くなるので大手と取引しやすい
  • お互いを助け合える関係性

BioromeoのHPより.png

※ビオロメオの生産者の一例【www.bioromeo.nlより】

こういった共同経営体が生まれた背景には、オランダには「日本型農協」がない、という背景もありそうです。


オランダには日本型の包括的な農協は存在しない。代わりに、各機能ごとに独立した組織が存在し、農業者の事業活動をしっかりとサポートしている。

オランダでは小売企業の寡占化の進展により卸売市場が役割を終え、解体されている。集出荷機能に焦点を当てると、オランダでは規模の大きな農業法人は集荷・選別・出荷施設を自ら所有し、また中小規模の農業者は民間のパッケージング企業に作業委託している。日本の農協の集出荷施設を単体で切り出したイメージだ。

【Diamond Online-日本農業の産業化をもたらす 農協改革のあるべき姿とは-より】

このように、オランダでは日本の農協のような卸売市場がなく、生産者は小売業者・加工業者・流通企業との「直接契約」が通常とのこと。

そこでBioRomeoのような共同経営体での経営も大切になってくるんですね。

特に、まだまだマイナーな有機農家だからこそ、こういった取り組みも重要なのではと思います。

【BioRomeoのホームページ:www.bioromeo.nl/(オランダ語)】

オランダの有機(オーガニック)農業について感じること【日本との違い】

最後に、同農園で農業研修をされていたKさんより、有機農業やオーガニック製品について、日本と比較して感じるところを伺ったのでご紹介します。

野菜の「質」の高さ

オランダの有機野菜は「質」がとても高いと感じるそう。

これはぼくも消費者として感じるところでもあります。

s_オーガニック野菜3.JPG

※オーガニック専門店にて

こっちで売られている有機野菜・フルーツは虫食いもほとんどなく、慣行栽培で作られた野菜に負けないくらいキレイなんです。

また、これは生産者にとってはあまりいいことではないかもしれませんが、「値段」も慣行栽培野菜と大きくは違いません。

でもそれは消費者に需要があり、有機野菜の市場がある程度大きくなっている証でもあると思います。

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※オーガニックマーケットにて

「環境」に対する意識の高さ

オランダで有機農業に関わっていて思うことは、オランダの消費者や生産者は「環境にいい」ことをより意識している、と感じるそう。

日本で有機・オーガニックというと、無農薬の「安全性」や野菜の「味」を消費者と生産者が強く意識していると思います。

でもオランダでは、もちろん上記の意識もあるが、それと同等もしくはそれ以上に有機野菜は「環境にいい」ということに価値を置いていると感じるそうです。

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有機野菜を生産・購入することは、私達が住む地球の「環境」を維持・保護することにつながる!そういった意識です。

生産者も、有機農業は環境に優しいことを誇りに思っていて、よく話にも出てくるそうですよ。

ぼくもオランダで生活していて、消費者として同じことを感じていました。

また以前お話を伺ったオランダの有機野菜・フルーツ専門流通会社でも、環境に対して様々な啓蒙活動を行っていました。

(参考:考えさせられるキャンペーン!オランダの有機野菜・フルーツ流通大手Eosta社訪問レポ、 オーガニックは実は安い!?オランダ有機野菜・フルーツ流通大手Eosta社の最新キャンペーン

これはヨーロッパ全体が環境に対する意識が高く、そういった教育や文化が根付いていることも大きい気がします。

日本でも有機野菜・フルーツは「環境にいい」ということも価値として普及すれば、有機市場もより広がるのかな、とも思いました。

まとめ

以上、オランダの大規模な有機農園の見学レポートでした。

実は今回は訪問した日が台風並の強風(大人がまともに歩けませんでしたw)や雨が降っていて、あまり外の様子は見れなかった(畑の写真が少ないのはこの理由から)ので、また機会があれば訪問したいと思います。

また、もしオランダで見学してきてほしい農園や作物があれば、ご連絡頂ければ嬉しいです!

ではご覧頂き、ありがとうございました。

最後に、今回の視察にご協力頂いたKさん、本当にありがとうございました。

オランダよりミズキ(@yMIZUKI8)でした^^

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