オーガニックは実は安い!?オランダ有機野菜・フルーツ流通大手Eosta社の最新キャンペーン

こんにちは、オランダよりミズキ(@yMIZUKI8)です。

オランダ有機野菜・フルーツ流通大手のEosta社の訪問レポ最終回となります。

今回はEosta社の最新キャンペーンを紹介します。

その名も「True Cost of Food(食べ物の真実の値段)」

これは、今回Eosta社の訪問をしてぼくが一番感銘を受けたキャンペーンです。

※Eosta社の概要や、その他のキャンペーンなどについては過去記事をご参考ください。
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さくっと概要を知りたい方はこちらへ

「True Cost of Food(食べ物の真実の値段)」キャンペーンとは?

本キャンペーンは、Eosta社が2016年の1月にIFOAM(国際有機農業運動連盟)と共同で発表したキャンペーンです。

キャンペーンロゴ大

このキャンペーンの趣旨は、その名の通り「食べ物の真実の値段」を消費者に伝えることです。

私達が購入する食べ物の「環境」や「社会」性を考慮した「隠れた費用(hidden cost)」について消費者に伝え、「有機栽培」と農薬や化学肥料を使う「慣行栽培」で栽培された作物の「真実の値段」を伝えることを目的としたキャンペーンです【Eosta社より】

同キャンペーンサイト にて同社CEOのVolkert Engelsman氏は以下のように語っています。

このキャンペーンの「情報」は非常に重要だ。なぜなら私たち消費者は現在「食料の真実の値段(費用)」を正しく知ることができていないからだ

(ミズキ翻訳)

食料の「真実の値段」!?

これは、どういうことでしょうか?

スーパーの食品売場でみると、有機野菜よりも慣行農業で作られた野菜の方が安いのは明らかで、消費者の大部分が「有機野菜は安全だろうけど、高い」というイメージだと思います。

Engelsman氏が同サイトで使っている例でいえば、

慣行栽培が使用している化学肥料や農薬は、製造過程で石油など化学肥料を大量に消費し、それが二酸化炭素排出に繋がり地球の温暖化が進む。そしてそれを解決するために多くの費用が将来必要になる。

つまり、慣行栽培で作られた食料の額面は安いけれど、将来この農法により汚染されたり、自然な循環を失った環境や社会を取り戻すときの費用を考えると、有機栽培で作られた野菜やフルーツの方が安いというわけです。

下記のキャンペーンビデオは英語ですが、同コンセプトがかわいいイラストで理解しやすいので、ぜひみてみてください!

Engelsman氏は、同キャンペーンサイトにて下記のようにも語っています。

あなたがこのキャンペーンで明らかになる数字をみれば、慣行栽培で作られた食料が、有機栽培で作られた食料に比べて高いことが明確になります。私たちは実際にこの違いがどれだけ大きいかを紹介することができます。私達の子供や孫の世代や、この地球に、私達が将来押し付けようしている環境や社会に対する費用はどれほどのものでしょうか?これらを明らかにするために私たちは同キャンペーンを立ち上げました。

(ミズキ翻訳)

もし本当に慣行栽培で作られた食料よりも有機栽培で作らた食料の方が安かったら、あえて農薬や化学肥料が使われた慣行栽培の野菜やフルーツを買う理由がなくなりますよね?

そして、出来る限り私達の次の世代や、地球のことを考えて行動したいですよね!

では、より詳しくこのキャンペーンを見ていきましょう!

有機栽培は高くない、、慣行栽培が安すぎる

Organic is note expensive.. conventional is too cheap( 有機栽培は高くない、、慣行栽培が安すぎる )

これは、このキャンペーンのキャッチフレーズにもなっています。

Eosta社は、現在EU諸国で販売されている野菜やフルーツは「安すぎ」であり、「環境や社会に与える悪い影響を隠している」と主張しています。

キャンペーンロゴ

食料生産に関わる世界的な「隠れた費用」は毎年4.8兆USドル(約495兆円)にも!?

FAO(国連食糧農業機関)の試算によると、慣行栽培による「隠れた費用(hidden cost)」は、環境汚染に関わる費用は毎年2.1兆USドル 、社会に関わる費用は毎年2.7兆USドル となっており、合計すると毎年4.8兆USドル( 1ドル103円 で約495兆円)にもなるそうです!

この隠れた費用が食料の値段に反映されれば、有機栽培の食料は慣行栽培に比べて格段に安くなると同キャンペーンサイトは述べています。

納税者(消費者)は、間接的に政府が行っている水の浄化やかんがい用水等の費用を払っていますし、また農薬などで健康に害をきたせば、その治療費の一部を国が税金から保証します。そして、それらの費用は私達の次の世代が肩代りすることになります。

隠れた費用(Hidden Cost)

同キャンペーンサイトによれば、FAO(国連食糧農業機関)は食料生産の隠れた費用を算出する方法を確立していて、水利用、水質汚染、温室効果ガス排出などにかかる費用が算出できるようです。

そして、同キャンペーンもこの国際機関が算出した数字を根拠に行われているため、自社で適当に作った数字ではなく、とても透明性の高いキャンペーンだともいえます。

「Transparency is the Solution(透明性が解決策だ)」

これは、ぼくに本キャンペーンを説明してくれたEosta社の担当者も、特に強く話していたのが印象的でした。

透明性はこういったキャンペーンでは特に重要です!

もしデタラメな数字でこういったキャンペーンをやっていたら、同社や同社製品に対する消費者の信用が一瞬で崩れてしまいますよね。

では、ここで「隠れた費用」の例を紹介します。

Eosta社が上記の国連食糧農業機関の計算を元に算出した、アルゼンチンの「慣行栽培」で作られる梨栽培における、気候変動に関わる年間の費用は1エーカー当り987ポンド(1ポンド130円で約13万円)で、同様に水質汚染と土壌浸食における年間費用は1エーカー当り236~365ポンド (1ポンド130円で約3~4.8万円) でした。

同様に、アルゼンチンの「有機栽培」で作らた梨農家(Hugo Sanchez氏)のコストも算出しており、1エーカー当り少なく見積もっても718ポンド (1ポンド130円で約9万円) の社会的利益(費用削減)になっていると述べています (生物学的多様性、健康などの費用削減などは含んでいない) 。

結果、同社の販売する有機栽培の梨は1キロ当り4.4ペンス(1ポンド130円で約5.7円)の社会的利益になっているそうです!

hugo-sanchez

※Hugo氏の梨【Nature&moreより】

同キャンペーンはこのように、具体的な数字を消費者に示すことで、「有機栽培は高くない、、慣行栽培が安すぎる」というメッセージを伝え、有機栽培の食料の購入を促しています。Eosta社より】

注力する6つのエリア

ture-cost-of-food-6-focuses

この図は本キャンペーンで使われている冊子の例ですが、このように下記の6つのカテゴリーに注力して、慣行栽培と有機栽培の隠れた費用を含む各費用を掲載しています【Eosta社より】。

  • Climate(気候)
  • Soil(土壌)
  • Water(水)
  • Biodiversity loss(生物多様性の減少)
  • Society(社会)
  • Health(健康)

それぞれが、下記のような費用を説明しているようです。

  • Climate(気候):森林破壊、集約農業等によって起こる気候変動に対する費用

  • Soil(土壌):土壌の不適切な管理等によって起こる、水食や風等による土壌の砂漠化や土壌汚染に対する費用

  • Water(水):水質汚染に対する費用(水の浄化など)
  • Biodiversity loss(生物多様性の減少):動植物(微生物なども含む)の減少に対する費用

  • Society(社会):肥沃な土壌や人が生活できる環境を失うことに対する費用

  • Health(健康):農薬等によって健康の被害を受けた人にかかる費用

これを上記の図のマスカットを例にとって具体的に記載します。※1ヘクタール毎の費用となります。

マスカットの例.jpg

【ekosara.siより】

  • Climate(気候):慣行農業にかかる費用=3,028ユーロ、有機農業にかかる費用=1,256ユーロこの有機栽培のマスカットを買うことで得られる、「気候」に関わる社会的な利益は1,772ユーロ

  • Soil(土壌):慣行農業にかかる費用=89ユーロ、有機栽培の利益(ここでは利益を記載)=257ユーロこの有機栽培のマスカットを買うことで得られる、「土壌」に関わる社会的な利益は346ユーロ

  • Water(水):慣行農業にかかる費用=672ユーロ、有機栽培にかかる費用=339ユーロこの有機栽培のマスカットを買うことで得られる、「水」に関わる社会的な利益は333ユーロ

  • Biodiversity loss(生物多様性の減少)、Society(社会)、Health(健康)は現在まだ算出できていないようです。

いかがでしょうか。

このマスカットを購入する際に、有機栽培のマスカットを買うことで得られる環境や社会的なコストが分かると、消費者もより納得感を持って有機野菜やフルーツを買うことができるのではないでしょうか。

店舗でのコミュニケーション施策

同キャンペーンは主に店頭にて消費者に「食べ物の真実の値段」を伝えていますが、具体的には下記のようなツールを使っているそうです。

・ポストカード型冊子
・チラシ
・お店のポスターや掲示板
・店頭ポップ
・ウェブサイト

true-cost-of-food-image-midum

※広告例(有機栽培の葡萄を買うことで、年間100㎡当り25.2リットルの水が救える!)【freshplaza.comより】

本キャンペーンもそうですが、Eosta社のその他のキャンペーンやウェブサイトをみて思うのが、デザインがとても上手です!

とてもポップでかわいいデザインが、同社のキャンペーンや有機野菜を消費者にとってより身近な存在にしているんだと思います。

dame_met_peren_in_winkel

本キャンペーンはオランダ政府にも影響を!?

これは本キャンペーンを説明してくれた担当者に聞いたのですが、本キャンペーンはオランダ政府にも認められてきており、オランダ政府が有機農家に対しての優遇税制も検討しているらしいです。

また、その他のヨーロッパの国ではすでに有機栽培農家に対する優遇税制をしいている国もあるようです(別途リサーチしたいと思います)。

このように、消費者だけでなく政府なども巻き込んで、有機農業の必要性を訴えている本キャンペーン、本当に素晴らしいです!

キャンペーンロゴ大


以上、Eosta社の最新キャンペーンである「True Cost of Food(食べ物の真実の値段)」について紹介しました。

いかがでしたでしょうか?

ぼくはこのキャンペーンが有機栽培についての消費者の意識を変えるきかっけになりえる点、そしてそれが具体的な数字を元にとても説得力のある点にとても感銘を受けました!

「有機栽培でつくられた食べ物の値段は高い」という概念を変えうる、素晴らしいキャンペーンだと思います。

そして私達の次の世代や、地球のことを考えたキャンペーンです。

みなさんも実際の価格だけではなく、「隠れた費用」や将来の環境・社会をイメージしながら、普段のお買い物してみてはいかがでしょうか。

長文お読み頂き、ありがとうございました^^

オランダよりミズキ(@yMIZUKI8)でした。

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