こんにちは、オランダよりミズキ(@yMIZUKI8)です。
Theオランダな、大規模なイチゴ農園を視察してきたのでレポートします。
ぼくの想像をはるかに超える、大規模なイチゴ農園でした!
日本のイチゴ栽培との違いなど、どこか参考になるところがあれば幸いです。
情報が沢山あるので2部構成としました。
パート①では、同農園の農地・栽培スケジュール・栽培管理・栽培品種などについて。
パート②では、その他の施設紹介・主な販売先と価格・季節労働者の活用・オランダと日本の違いなどを紹介します。(パート②はこちら)
※ぼく自身イチゴ栽培の経験はなく、視察前に予習はしましたが、なにぶん情報が表面的な部分はご容赦ください。もし間違い等がありましたら、修正しますのでご連絡頂けば幸いです。
また追加で調べてほしいことなども、ご連絡頂けると嬉しいです^^
では、どうぞー♪
さくっと概要を知りたい方はこちらへ
視察したオランダのイチゴ農園について
まずは今回視察したイチゴ農家をご紹介。
視察したのは10月下旬。
同農園は1973年に家族経営で始めた農園で、主にイチゴとアスパラガスを栽培しています。
今回はその大規模なイチゴ農園の一部を視察させて頂きました。
このイチゴ農園は、日本からオランダに農業研修に来ている友人Iさんの農業研修先でもあります。
Iさんと共に農園を案内してくれたのは、ポーランド人のマタヨシさんという方(名前に超親近感を感じました!)。
同農園に16年間勤めているらしく知識・経験が豊富で、ポーランドからの季節労働者のマネジメントもしているそうです。
とても優しく丁寧に説明して頂きました。
休日にも関わらず対応して頂いたIさんとマタヨシさんに感謝です。
イチゴ農園の規模は?
視察した農園は合計で40ha(ヘクタール)もの規模でイチゴ栽培をしていました!
これはなんと、東京ドームの約8.5倍の規模になります!
相当な広さですね。
オランダでも大きい規模だそうで、同農園は地元の新聞などでも紹介されるほど有名だそうです。
【www.geschildeasperge.nlより】
なお【栃木県のいちご生産についての一考察(2005)】によれば、2000年の日本のイチゴ農家の平均栽培面積は20a (0.2ha)とのこと。
日本と比べると、同農園の規模の凄さが分かりやすいですね!
また同じく、2000年のスペインのイチゴ農家の平均栽培面積は2-3ha、アメリカは25haとのことです。
スペインとアメリカのイチゴの平均栽培面積と比べても、今回視察したイチゴ農園の40haは相当大きい規模だということが分かります。
今回ぼくが視察させて頂いたのは、その農園の一部で、
露地栽培の3ha、苗床の3ha、そしてガラスハウスの0.5haの圃場(農地)を視察しました。
苗床の様子。苗床だけでもこの広さです!
まだまだ全体の一部ですが、3haでも十分広大に感じました。
視察した圃場(農地)はどんな感じ?
視察した各圃場の様子を詳しくご紹介します。
高設栽培(3ha)
ここがメインの圃場。
写真のような高設栽培をしていますが、ビニールハウス内ではなく露地(外)に設置しています。
(※高設栽培とは読んで字のとおり、イチゴを高い場所に植えて栽培することです。)
オランダではテーブルトップ(Table top)と呼ばれているようです。
高設栽培は収穫などの作業を、腰を曲げずに楽にできる利点があります。
同農園のように圃場が大規模になればなるほど、必然と作業量も増えるので、労働環境の整備や効率化はとても重要なのだと感じました。
高設栽培設備の上部にはフィルムをかけています。
雨よけと温暖効果による生育促進を意図しているとのことです。
培地には主に「ヤシ殻」を施用していて、 中にある給水パイプから潅水(水やり)と液肥施用をしていました。
毎年植え替えを行うそうです。
育苗用の圃場(3ha)
そして、こちらが3haの育苗用の圃場。
現在、約300万の苗を育てているそう。
圃場には排水用のシートが2重に敷かれており、排水のために緩やかな傾斜がつけてありました。
苗は育苗トレーを使って栽培されています。
ガラスハウス(0.5ha)
そしてガラスハウス。
寒冷期の栽培や収穫などに対応しているそうです。
この施設は、まさにぼくが訪問前にイメージしていたオランダのイチゴ農園でした!
色々な設備の話を聞くことができ、とてもワクワクしました。
こちらは露地の高設栽培とは違い、各苗が「ポット」にて高設栽培されていました。
管理がしやすいようにポットで栽培しているそうで、時期によってその密集度を変えたりするそうです。
こちらも培地には主にヤシ殻を使用しています。
各ポットには管を通して、潅水と液肥施用していました。
またポットの下には、ガスで炊いた温水が流れる温湯管があり、ハウス内を温めています。
そして、イチゴの成長に欠かせない二酸化炭素(CO2)を放出するビニールの筒が設置されていました。
ハウス内を温める温湯管や二酸化炭素を供給する設備などを初めて見たので、とても勉強になりました!
オランダのイチゴの栽培スケジュールは?
同イチゴ農園の大まかな栽培スケジュールは下記のとおりです。
- 【7-8月】ランナー※の採苗と植え付け(仮植)
↓ - 【8-11月】育苗期間
↓ - 【11月】苗を専用の冷凍庫に移動し、冷凍(-1~-2℃)して休眠させる。
↓ - 【4-5月】苗の植え付け(定植)
↓ - 【6-8月】収穫期間
(※ランナー:親株から発生する長いつる。新しい苗になるもの。)
メインの収穫時期は6-8月とのことですが、10月くらいまで収穫できる品種もあるそう。
また、苗の冷凍中(休眠中)は基本的には何もしないそうで、苗の一部は販売用として出荷していました(これも結構いい商売になっているそう)。
日本では基本的に定植が9-10月で、冬季には苗をハウスやトンネル内で休眠させると思うので、同農園は定植前に冷凍庫で休眠させる点が大きな違いかなと思いました。
また日本のイチゴの主な収穫時期は、促成栽培の場合の12月から通常は5・6月までくらいなので、オランダの収穫時期が6-8月がメインという点も大きな違いだと感じました。
基本的な日常の栽培管理(メンテナンス)は?
次に、同イチゴ農園の主な栽培管理を、各栽培フェーズ毎に簡単にご紹介します。
育苗中のメンテナンス
●スプリンクラーで養液入りの水を撒く。1日1回5分程運転する。
● 農薬散布。平均で週1回くらいだそうで、飛行機の翼のような大規模な農機を使って散布するそう(これ今度見てみたい)。
●伸びすぎたランナーを機械で刈る。機械で刈るのは大規模な農地のオランダならではでしょうか。
● 早く咲いてしまった花を摘み取る。この作業が腰に負担が大きく、全体の作業の中で一番大変とのこと。
● カラスを追っ払う。カラスがウジ虫などの虫を食べるために育苗トレーをひっくり返すので、そのカラスを追い払う。
※カラスにひっくり返された育苗トレー
ぼくが視察した10月下旬はこれがメインの作業とのことでした。農場が広いので、歩いてカラスを追い払うだけでも大変時間がかかるそうです。
定植後のメンテナンス
●収穫。定植後のメインの作業。大人数が作業します。
●余分なランナーや古い葉の整理(わき芽の整理)。ただ、収穫で忙しい時はこういった整理はせずに、収穫に集中するそう。
●農薬散布。平均で週に1回散布するそう。こちらも農機を使い効率的に行う。
● 受粉はミツバチを活用。
●収穫後は 高設栽培設備の土をはがし(落とし)、それを機械で集める。これをコンポスト(堆肥)にしてアスパラガス畑の土壌に再利用する。
栽培している主なイチゴの品種は?
パート①の最後に、今回視察した際に主に栽培されていたイチゴ2品種を簡単にご紹介。
なお、同農園はその他にも試験的に沢山の品種を栽培していました。
ムラーノ(Murano)
まずはムラーノという品種。
【以下www.froutonea.comより】
イタリアの農業共同体でつくられた品種。
その品質の良さから、オランダとベルギーの生産者と小売店から高い支持を得ているそう。
近年はイギリスでも流行しており、その味と色味から他の品種よりも高値で取引される傾向があるみたいです。
同サイトによればムラーノは下記のような特徴があるとのこと。
- 植物本来がもつ野性性と強い活力をもつ
- 慣行栽培から有機栽培までの幅広い適応性と高い生産性
- 耐病性に優れ、少ない水や養分で育つため、環境への影響も少ない
- 独特の美味しさと、その一貫性による高い品質の果実
エルサンタ(Elsanta)
そしてもう1つがエルサンタという品種。
【以下www.beeren-plantproducts.comより】
【www.thompson-morgan.comより】
その高い生産性と安定性、収穫期間の長さから、生産者と流通業者からも支持が強い品種とのことです。
果肉が固く、日持ちや輸送性にも優れているそう。
果実は大きく味がしっかりしていて、ヨーロッパ全土で作られており、特に大規模な農園で栽培されているようです。
パート①まとめ
以上、視察したオランダのイチゴ農家の圃場や栽培についてご紹介しました。
いかがでしたでしょうか?
ぼくはその規模にとにかく圧倒されました。全農場の一部だけの視察でしたが、十分広大でした。
そして各設備や栽培方法に日本との違いも感じられ、とても勉強になりました。
パート②では、その他の施設紹介・主な販売先と価格・季節労働者の活用・オランダと日本の違いなどを紹介します。
では、長文ご覧頂きありがとうございました。
オランダよりミズキ(@yMIZUKI8)でした^^