こんにちは、オランダよりミズキです!
今日は農業世界一の大学である、オランダのワーヘニンゲン大学にてお手伝いさせて頂いた企業向け研修プログラムのご紹介。
※オシャレなワーヘニンゲン大学の図書館
ワーヘニンゲン大学では企業向けの研修プログラムを要望に合わせて「オーダーメイド」で行っています。
今回は、日本からの計20名程が受講されるということで、ワーヘニンゲン大学より通訳・アテンドの依頼を受け、お手伝いさせていただきました。
世界一の農業大学で、各分野の教授や研究者から最新の情報とともに充実した講義を受けることができるのです。
また、オランダ企業への訪問視察などもプログラムに含むことができ、座学と現場視察の両方から学ぶことができます。
本記事では、そんな世界中から企業が学びにきているワーヘニンゲン大学の研修プログラムをご紹介したいと思います。
ご参考にしていただき、ご興味があればぜひ受講も検討してみてくださいね!
なお、ぼく自身ワーヘニンゲン大学で施設園芸夏季コースを受講しました。
そういった関係もありコーディネーターとは密に連携していますので、本プログラムにご興味あればお気軽にご連絡ください(^^)
ぼくが受講したコース詳細は下記よりご覧ください。
それではさっそくご紹介します!
さくっと概要を知りたい方はこちらへ
企業向け研修や社会人向けプログラムを提供しているワーヘニンゲンアカデミー(Wageningen Academy)
【www.wur.nlより】
まず、企業向け研修プログラムを行っているワーヘニンゲンアカデミーの紹介から。
世界一の農業大学として有名なワーヘニンゲン大学は、主に大学・研究機関(ワーヘニンゲンリサーチ)から構成されていますが、その中に社会人や研究者向けのプログラムをもつ「ワーヘニンゲンアカデミー」という組織があります。
このワーヘニンゲンアカデミーが、ぼくが受講した短期コースや社会人向け研修プログラムを企画・運営しています。
そして、大学や大学研究機関と連携して、企業や団体の要望にそった専門の教授や研究者をマッチングさせ、プログラムをつくっているのです。
大学に所属している著名な教授や最先端の研究を担当している研究者をうまくマッチングさせ、プログラムをつくり、収益を得ています。
とても素晴らしい取り組みだと思います。
また短期コースは数日・数週間など様々あるので、色々な需要に対応できます。
企業向けの研修は完全にオーダーメイドで、希望トピックを希望の日数でコーディネートしてくれます。
世界一位の農業大学にて研修を行えるので、世界中の企業や団体が来ているとのこと!
キーワードは「Today’s Knowledge Tomorrow’s Business」
これは、ワーヘニンゲンアカデミーのキャッチフレーズです。
「今日の知識を、明日のビジネスに」
最新で実践的な知識・技術を学び、明日のビジネスに生かす。素晴らしいコンセプトだと思います。
日本から計20名(14企業)がワーヘニンゲン大学研修プログラムに参加
おはようございます!今日から農業世界一位のワーヘニンゲン大学へ日本から農食品関連企業様が2.5日の特別コース(授業と視察)を受けられます。私は有り難いことに通訳とアテンドをさせて頂きます。授業の通訳は緊張しますが、多くを得て頂けるようがんばります!みなさん良い一日を\(^o^)/ pic.twitter.com/WY7uaZtM4t
— ミズキ@オランダ在住農業トランスレーター (@yMIZUKI8) 2017年10月9日
では今回お手伝いさせて頂いたプログラム内容を具体的にご紹介します。
日本から20名の参加があり、計14社の企業から経営者や責任者が来られていました。
※講義が行われたキャンパス内の建物内部の様子
農・食関連の社団法人の取りまとめで、野菜の生産企業や加工業者、流通業者様が参加されていました。
研修目的は最新の加工技術・品質管理技術を学ぶこと!
そして今回の研修の目的は、ワーヘニンゲン大学にて最新の加工技術と品質管理技術を学ぶことでした。
特に色々な品質管理の最新研究内容や、技術には皆様とても興味を持っておられました。
計2日半のオーダーメイド研修。気になるその中身とは!?
次に簡単に本研修のスケジュールを順を追ってご紹介します。
①日目:講義(ワーヘニンゲン大学紹介、品質管理、農業ロボットとフェノミクス、学内試験場見学)
ワーヘニンゲン大学での企業様研修1日目終了!今回は野菜の生産・加工・卸の中小企業様の団体。特に収穫後の品質管理や物流、また関連したAIや最新技術がメインのテーマです。非常に面白くためになる講義でした!明日は農場視察です(^o^) pic.twitter.com/3kUy34GBup
— ミズキ@オランダ在住農業トランスレーター (@yMIZUKI8) 2017年10月9日
1日目は、ワーヘニンゲン大学の紹介と講義、そして学内試験場視察。
大学の紹介では、ワーヘニンゲンアカデミー代表から大学全体、ワーヘニンゲンアカデミーについての詳しい紹介を受けました。
また、ワーヘニンゲン大学アジア担当からは研究機関であるワーヘニンゲンリサーチについて、そして日本での取り組みについてご紹介頂きました。
日本との取り組みでは、様々な研究機関・大学・企業・自治体とのコラボレーションについてお話がありました。
共同研究を行っている研究機関として国立環境研究所・農研機構、大学では、東京大学・九州大学・北海道大学・京都大学、企業ではキッコーマン・旭硝子、自治体では宮崎県などとの取り組みを紹介していましたよ。
※ワーヘニンゲン大学の教授が東京大学訪問した時の様子【www.wur.nlより】
日本でも色々な研究活動を行っているんですね!
そしてメインの講義では、品質管理、農業ロボットとフェノミクスが一日目に行なわれました。
品質管理の講義では、今の市場や小売店のトレンド、収穫時の品質とロジスティック、様々な品質管理技術と考え方、ワーヘニンゲン大学での研究内容を紹介。
【www.wur.nlより】
バリューチェーンでの総合的なアプローチと透明性、品質低下のロジックの理解とそれを防ぐ様々な可能性について強調していました。
農業ロボットとフェノミクスの講義では、青果物の品質を大きく左右するフェノミクス(表現型:遺伝的、環境的な影響を受けて現れる生理的な性質と形質のこと)のお話と、生産から収穫、選別、出荷において品質を均一・向上してくれる農業ロボットのお話が聞けました。
【www.wur.nlより】
農業ロボットはとても興味深い内容で、苗の選別ロボット、接ぎ木ロボット、トマトの生育を自動で観測する自走型ロボット、パプリカ収穫ロボット、病気検知ロボット、露地栽培用の生育状況観測ドローンやトラクター、野菜加工機械、糖度や色形を選別するセンサーやロボットなど様々な研究を紹介してくれました。
下記に少しご紹介しますね。
【www.sweeper-robot.euより】
これはパプリカの自動収穫ロボットの実験風景。
【www.sweeper-robot.euより】
画像センサーが、収穫に適したパプリカと葉や茎を検知して、ロボットのアームがパプリカを収穫します。
葉や茎が複雑に込み入っているので、なかなか難しいようですが、これが完成すれば年々上がっている労働コストを押さえて、24時間収穫することができます。同様にキュウリでも研究が行われているそうです。
そして下記の動画は、トマトの灰色カビ病を早期に発見し、スポット的に薬を散布するロボット。画像解析技術により行っています。
これは画像解析カメラが5つついた品質チェック機械。
これまではベルトコンベアで野菜が流れてきて、それを上部のカメラのみで解析していたそうですが、それでは裏側の品質(色・形・欠陥)を確認できませんでした。しかし、この装置を使えば全ての角度から野菜の品質チェックができるのです。
なんと現状で、1秒間に45個のジャガイモをチェックできるスピードとのこと!
(ベルトコンベアで飛ばして少し浮かせた状態で撮影するようです)
特にこの講義は参加者の皆さん興味があったようで、とても面白い内容でした。
また、1日目の夜は夕食会があり、教授と共に夕食を囲み、色々なお話ができ、コネクション作りも促してくれました。
②日目:野外研修・視察(大規模なパプリカ農家、種苗会社、ワーヘニンゲン大学品質管理・アグリロボット技術センサー)
2日目は、オランダ農業企業の2社の視察と、大学内に最近できた品質管理と農業ロボット専門の施設を見学。
1社目の施設は大規模なパプリカ生産者を視察。計30ヘクタール(東京ドーム約6つ分)の施設で主にパプリカを栽培しています。
地熱を使ったサステイナブルにハウスを温める設備など、最新のオランダ型ハウスを視察しました。
2社目は世界的な育種会社で、品種改良の様子や、種の加工・生産現場を視察しました。
そして2日目の最後は、最近ワーヘニンゲン大学内にオープンしたばかりの品質管理&ロボット実験施設を見学。
ワーヘニンゲン大学の企業様向け研修2日目。学内の品質管理技術の研究施設を視察。3Dカメラや近赤外線による生鮮食品の品質チェックや、関連のロボットの研究施設を見学。今はいかに作物を傷つけずに、正確に、効率的に品質(味、見た目、硬さ、成熟度)を測定する技術の研究が進んでいました。 pic.twitter.com/FSe944x8re
— ミズキ@オランダ在住農業トランスレーター (@yMIZUKI8) 2017年10月10日
この施設は下記の動画がとてもわかりやすいので、ぜひご覧ください。様々な最新の実験設備やロボット技術の様子がみれます。
③日目:講義(PicknPack プロジェクトの紹介)、未来の青果パッケージングを垣間見た!
プログラムの最終日は午前中のみ講義が行なわれました。
講義内容は主に「PicknPack(ピック&パック)」と呼ばれる、選別・パッケージングのオートメーションの研究が紹介されました。
これもとても面白いプロジェクトだったので、簡単にご紹介したいと思います。
未来の青果パッケージングを垣間見ましたよ!
【www.wur.nlより】
これは本プロジェクトのイメージ図。
多様化するパッケージへのニーズと、少量ロットを迅速に卸す(小売店ニーズ)ための、柔軟性のあるパッケージングを目指して始まったプロジェクトです。
大きく3つのモジュール(部品)に分かれており、
①パッケージ前と後の青果物の質を測るセンサーモジュール、
②画像解析により青果物を掴み移動するロボットアームモジュール、
③容器サイズを自由に変更でき、パッケージをその場でプリント・密閉できるモジュール、となっています。
これは動画で見て頂いた方が分りやすいので、ぜひ下記の動画をご覧ください。
(YouTubeの設定で日本語訳字幕を付けるとキレイな訳では無いですが、分りやすいですよ!)
ビデオ内で説明されている各モジュールは簡単に説明すると下記の通り。
①容器サイズ(鋳型)をレゴのように自由に、簡単に組み替えれるモジュール
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②青果物の入ったクレート(収穫箱)をスキャンして、どこでいつ収穫されたかをスキャンするモジュール
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③クレートから優しく容器に移すロボットアーム(色々な製品に対応&ロボットが内部を自動洗浄する)
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④様々なセンサーがついた品質評価モジュール。トマトの例だと、重さや糖度、外部の傷や色、内部の劣化まで見つけます。
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⑤フレキシブルプリンターモジュール。事前にラベルやフィルムの印刷はいらず、その場で必要なデザインや、前のモジュールで計測したデータ(栽培場所や時間、糖度など)、出荷先(ギリギリまで変更可能)などをプリントできます。
最後にレーザーがフィルムをカット・密閉。密閉後は近赤外線カメラでチェックし、密閉が不完全であればすぐに再密封処理をしてくれます。
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⑥RFIDダグをつけるモジュール。これにより製品をトラック&トレースできる。
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⑦そして選別モジュール。ロボットアームが品質(グレード)と目的地に合わせて、選別します。
各モジュールの説明後には、清掃ロボット(これにより自動で各モジュールを内部から清掃に)や、インターフェイス(各モジュールが独立し、モジュールの入れ替えや追加も容易に)の説明がされています。
このように最終日にもとても面白い、まさに未来に向けたプロジェクトの講義を受けました。
なお、このPicknPackプロジェクトはまだまだ研究・プロトタイプ段階で、製品化はもう少し先にになりそうです。
まとめ
以上、計2日半のワーヘニンゲンアカデミーによる研修プログラムの紹介でした!
いかがでしたでしょうか。
今回は青果物収穫後の加工や品質管理の内容がメインでしたが、最新の技術や研究が勉強できたので、参加者の皆様はとても満足されているご様子でした。
センサーやロボット、そしてAIなどの農業とのコラボレーションはとても注目されている分野ですが、実際に色々な研究がみれ、これからのトレンドや将来への変化などへの対応もイメージできた大変貴重な機会になったと思います。
このように、農業や食に関わる分野で、世界でも最先端の技術や知識が集まるワーヘニンゲン大学。ここで研修をおこなう価値はとても大きいのではと感じています。
ご興味のある企業・団体様はお気軽にご連絡ください。
担当者との調整から通訳までお手伝いさせて頂きます!
こちらのページは、この研修に関してのワーヘニンゲン大学からのニュース記事。
研修後のアンケート評価では、5段階中の4.2ポイントと、とても高評価を得たことも紹介されています。
ご覧頂きありがとうございました!
皆様のご参考になれば幸いです^^